The Decisive Strike

Pulvis et umbra sumus.

2021-01-04 今日の官報

今月の30日チャレンジとして、「毎日官報」というのもを始めることにした。官報は、政府が発行する機関紙で、行政に関する多くの情報が載っているため、毎日読んでいると、現在政府の各省庁が何をしているのかがよくわかると思う。まずは1月、出ていたら毎日読み、気になった点をノートにつけることで、日本政治についてより深く知ることができるかもしれない、ということだ。

2021-01-04 の官報は以下。

  • 本誌 第404号
  • 号外 第1号
  • 政府調達 第1号

本誌

外務省: 米国との宇宙協力に関する告示

  1. 日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基づくホステッド・ペイロード協力に関する書簡の交換に関する件(外務一)
  2. 平和的目的のための宇宙の探査及び利用における協力のための損害賠償責任に係る相互放棄に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の附属書の修正に関する書簡の交換に関する件(同二)

1では、日米でのホステッド・ペイロード協力に関する書簡を公開。要は、宇宙空間における安全保障において、日本の人工衛星にアメリカの監視機材を載せることができるようになる、というもの。宇宙監視に向けて米国の先進的な機材を日本側でも利用できるようにするという、宇宙安全保障の観点からは重要そうな合意だ。

外務省からの発表や報道などは以下。

2では、既に存在する、宇宙の探査の際の損害賠償責任の相互放棄について、機材を追加するもののようだ。参考リンクは以下。

財務省: 買入消却された個人向け国債のリスト

個人向け国債の発行等に関する省令第四条第六項第二号に規定する中途換金に係る個人向け国債の買入消却に関する件(財務一)

買入消却とは、満期を迎えていない国債を発行当局が市中金融機関から買い戻して消却することであるらしい。今回なされたのは、2457億9501万円分。すごい額だが、国債発行の総額は270兆円超というから、焼け石に水感がある。

関連する省令は以下。

厚生労働省: 細かい話

  1. 租税特別措置法施行令第二十六条の二十七の二第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める一般用医薬品等の一部を改正する件(厚生労働一)
  2. 自殺対策の総合的かつ効果的な実施に資するための調査研究及びその成果の活用等の推進に関する法律第四条第三項の規定に基づく届出があった件(同二)

1は、特定一般用医薬品等購入費を支払つた場合の医療費控除の特例に関して、ベトネベートクリームSとベトネベートN軟膏ASが除かれていたのが、除かれなくなったという話。なぜかはわからない。成分が変わったのかな。

2は単に一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターが住所変更したという話。

農林水産省: 保安林、保安施設地区、特別母樹林

  1. 保安林の指定をする件(農林水産一~八)
  2. 保安林の指定を解除する件(同九~一一)
  3. 保安林の指定施業要件を変更する件(同一二~一六)
  4. 保安施設地区の指定をする件(同一七)
  5. 特別母樹林の指定を解除する件(同一八)

なんか細かい話なので、割愛。

国土交通省: 三重軽自動車検査協会の住所変更

  1. 軽自動車検査協会の事務所の所在地の変更及び検査事務を開始する日についての届出があった件(国土交通一)

はい。

原子力規制委員会: 東芝と日立の特定容器の型式証明

  1. 使用済燃料貯蔵施設に係る特定容器等の型式の設計に係る型式証明の件(原子力規制委一、二)

原子力の特定容器は、型式証明というものが必要らしい。参考になりそうなスライドは以下。

新規性適合性審査の型式証明制度に関する活用について

防衛装備庁: 海上射撃試験

  1. 海上における射撃試験を実施する件(防衛装備庁一)

そもそも防衛装備庁というものが防衛省とは別にあったことを知らなかった。経理装備局、各幕僚監部の関係部門、装備施設本部、技術研究本部を集約・統合して、2015年に発足していたらしい。

告示は、下北半島でやる実験の話。防衛装備庁の下北試験場があるらしい。

関東地方整備局: 千葉県香取郡多古町間倉の道路の供用

この辺らしい。

そのほか

ミナミのネットカジノ「バー・クレイン」が摘発された事件に関わる押収の話などが載っていて面白かった。自分はこの事件を知らなかったのだが、ネットカジノでも摘発されるのだな。報道は以下。

www.sankei.com

しかし破産すると自分の氏名・住所が官報にしっかり載ってしまうの、結構恐怖だな。

号外

中日本高速道路株式会社料金の額及び徴収期間の変更、日本弁護士連合会懲戒の処分・裁決取消訴訟の判決確定関係

2021静岡ドライブプランというものでETC利用の際高速料金が安くなるらしい。行ってみようかな。

【緊急告知】新春 Spladder Season Six 開催 #Spladder6

この記事は、Splathon Advent Calendar 2020 の 25 日目です。前の記事は、かがみさんの「DanceEvolution ARCADEについて語る - ymks」でした。

告知

2021 年 1 月後半より、Spladder #6 が開催される!社会イカ・社会タコによるリーグ制トーナメントで、社会頭足類最強の称号を手にするのはいったいどの企業・団体なのか。キミも登録して、勝利をつかめ!登録フォームはこちら: Spladder #6 チーム登録フォーム

Spladder とは

年に通常 2 度開催される、 Splathon 登録企業・団体チームによるクローズドなリーグ制トーナメント。2020 年夏には、シーズン 5 が開催され、38 チームが登録した。最終優勝チームは、NuRItaclesましゅまろだった。

開催期間 (予定)

2021 年 1 月 18 日 ~ 2021 年 4 月 11 日

1 ラウンド 2 週間で 2 試合を 6 ラウンド行う。1 試合は 4 先 (Best of 7) で、運営側の指定するルール・ステージでのゲームとなる。

出場資格

同一企業・団体に所属する Splatoon プレイヤーで構成されたチームに出場資格がある。選手登録は 1 チーム 5 人までとする。

ただし、以下の条件のもと、例外を認める。

  • 過去その企業・団体に所属していたプレイヤーの登録を可とする。ただし、現在所属している企業・団体がチーム登録を行う場合、まずそちらでの出場を検討しなくてはならない。チームの中で少なくとも 1 名は現役でその企業・団体に所属している必要がある。
  • 登録しているプレイヤーの家族の登録を可とする。ただし、参加している他企業・団体に所属していない場合に限る。家族の詳細な定義については、ご相談ください。Splathon は多様性に配慮しています。
  • フリーエージェントは、チームで 1 人まで登録を可とする。ただし、ウデマエ制限に則って登録する必要がある。フリーエージェント (FA) のウデマエ制限については、次の項で述べる。

フリーエージェントのウデマエについて

フリーエージェントを除いたチーム内で、ウデマエXに到達しているプレイヤー全員の繰上Xパワー帯域の平均が 2300 を超えている場合、フリーエージェントの経験したことのあるXパワーの最大値は、その平均値を超えてはならないものとする。

例えば、ルールを問わず、チーム内の経験最高Xパワーが以下のようだった場合。

  • プレイヤー1: 2123 ⇨ 2200 に繰り上げて計算
  • プレイヤー2: 2458 ⇨ 2500 に繰り上げて計算
  • プレイヤー3: 2534 ⇨ 2600 に繰り上げて計算

(2200 + 2500 + 2600) / 3 は、2433。よって、最大Xパワーが2433以下のプレイヤーのみがフリーエージェントとして登録可能

リーグ分け

ディビジョン制度を採用。上位から 3 チームずつのディビジョンを作り、ディビジョン内部で総当たりを行う。ディビジョン内部で上位のチームは上のディビジョンへ、下位のチームは下のディビジョンへ移動となる。基本は勝敗数によるが、タイとなった場合、取得ゲーム差数、順位ハンデの順で順位を決定する。

途中参加

途中参加は可能。しかし、チーム数が増えることにより試合ができないチームが出ることを回避するため、参加タイミングを調整する場合がある。基本的には最初からの登録を推奨する。

この冬も、頭足類どもが Splathon をアツくする!

2020 年夏の Spladder #5 は、Spladder 史上最もハイレベルな戦いとなり、歴戦の強豪たちが並み居る中、複数の新星チームが活躍し観客を沸かせた。 以下のような参加選手による振り返りからも、熱い雰囲気が伝わってくる。

note.com

note.com

Spladder #6 も、ますますレベルが上がることが予想される。運営としても楽しみだぞ!

さあ、次のシーズンも、サービスサービスぅ!

注意書き

Splathon は社会人による Splatoon を中心としたゲーミングコミュニティです。Spladder は Splathon コミュニティ内部のクローズドイベントであり、現在、オープンな参加は受け付けておりません。あしからず。

書けなさ、について

父が死んでから十余年が経った。母は今でも当時と同じ家に住んでいる。幾度となく引越しについて話して、経済的にはそうすることが合理的であることはわかってはいるのだが、どうしてもあの家を手放すことができない。それは何故だろう。

わたしもまた、幾度となく父について書こうとしてきたが、そのたびにまとまった文章を書くことに失敗してきた。ノートを広げ、ペンを持って、いざ書かんとしても、いつも書き出すことに失敗するのである。いくつかの文章をこねくり回しても、どこか違和感が残って、最初からやり直す、ということを繰り返してきた。それは何故だろう。

時間がないから。仕事が忙しいから。ほかにもっとやるべきことがあるから。そういう理由をつけてやらないでいたこともあった。けれどもそうではないだろう。時間がある程度あったとしても、わたしは父についての語りを始めることができなかった。それが何故か、ようやく理解できた気がする。

我々は父について過去形で語ることができていないのだ。我々は今でも2006年にいる。過ぎ去ろうとしない過去の中を生きている。彼がひょんなことで、ふと家に帰ってくるのではないか、そう思いながら彼を待っている。だから父について現在形で語ることはできても、彼がどんな人だったかとか、どんなことを考えていたかということについて、過去形で語ることは、未だできない。そういうことだ。

そして今年も、2月13日が来る。

2020年の Splathon へ向けて

この記事は、Splathon Advent Calendar 2019 のための記事として書かれたものである。

Splathon は、日本最大の Splatoon 社会人コミュニティであり、それが主催するオフライン大会の名称でもある。コミュニティ内部では様々な Splatoon 以外の「部活」も存在し、肉を食う会や日本酒会、ポケモンガチ勢による大会やボドゲ会なども定期的に開催されている。毎日のようにプラベが立ち、ダメな社会人や社畜によるイカ墨のかけあいが行われている。そしてこのアドベントカレンダーも、コミュニティ内部で行われているイベントの一つである。遅くなって本当にごめんなさい。エネルギー切れで諸々文章を書く能力がダウンしていたのであるよ。

2019 年の Splathon ハイライトといえば、いかずち主催の Middle League や、Rookie League、eXtreme などのウデマエ別リーグがとても盛り上がったことだろう。企業の枠組みを超えて、似たような腕前同士で戦うことによって、互いに切磋琢磨することの楽しさは、Splathon にさらなる盛り上がりを与えたと言って良い。Rookie から Middle へ、そして Middlenai、eXtreme へと、リーグの階段を駆け上がっていく楽しさは、今までコミュニティになかったものだ。

そう言った腕前別リーグに加えて、低温調理からゆるキャンまで、様々な催しや、ゲーム以外の趣味も手広くカバーする Splathon ではあるが、一方でその本義はやはり企業チームによる Splatoon 対抗戦大会にあると私は考えている。

個人的にはここにある程度のこだわりを見せつつ、2020年も、オンラインでもオフラインでも、企業対抗戦大会を開催していきたい。まずは現在好評開催中のオンライン大会、 Spladder #4 をしっかりと終わらせる。参加チームは 39 を数え、どのディビジョンでも非常に白熱した、盛り上がる試合が行われている。もし Splathon 内でまだ参加していない企業チームがあれば、ぜひ参加して欲しい。

2019 年後半には、個人的には初めてのオフライン大会専任スタッフとなった Splathon #11 が開催された。言い出しっぺとして私がイベントオーナーをやらせてもらったが、実質的にはみーくん(Splathon #10 オーナー)が作り上げたインフラをベースとしてぼーりー(運営D)・ぼっくす(コミュニティオーナー)と専属スタッフ陣が素晴らしい動きをして回したものだ。深い感謝を再度あらわしたい。(Splathon #12 でオーナーをやってみたいという方も鋭意募集中だぞ!)

Splathon #11 は大きな成功だった、と言って良いだろう。参加者満足度は非常に高く、改善点はもちろんあるものの、オフラインのコミュニティイベントとしての Splathon は一定程度の完成を見たと言って良いと思う。配信、卓運営、フード、諸々、Splathon 初期に比べると非常に洗練されたものとなった。

また、オンラインの Spladder #4 の方も、様々なルール改定を経て、バランスのいい大会となってきたと評価して良いだろう。Splatoon 2 のアップデートの頻度が落ち、Splatoon 3 が出るまでの間、Splathon もこれ以上大きな変化を起こしていくというよりかは、安定期に入ったと言っても良いと私は考えている。

では、次は何をするべきだろうか。2020年、単に既存のイベントや大会を回していくだけでも十分に面白いと考えられるが、個人的に興味があるのは、オンラインとオフラインの大会のより緊密なコラボレーションである。

完全にコラボレーションをするなら、例えば、ワールドカップ方式がありうる。Spladder の結果をベースに、上位NチームがSplathonに出場する優先権を得る。シーディングも同様に行われ、上位チームであればより有利なグループに入ることができる。グループの上位Mチームが決勝トーナメントに進出する。そう言った形式をうまく作ることができれば、どちらもかなり盛り上がりそうで面白い。観戦や勝敗予想も捗る。そこまで徹底せずとも、例えば上位チームには優先的に登録することができる、のような運用もできるだろう。うまくいく形がなんなのか、考えてやると楽しそうだ。

ウデマエ別リーグのさらなる展開も見てみたいし、久々になんの縛りもないフリーのオンライン・リーグ (SOL) もあると面白いだろう。「やる」と言いつつまだやっていないイベントだってたくさんある。このコミュニティには、まだまだ面白くなるポテンシャルが、いくらでもある。

2020 年も、Splathon をイカ、よろしく〜!

ネットをよくするって、どうすれば: JADE設立について

長山です。お元気ですか?自分はこの2ヶ月、膝栗毛に失敗したり叔父が急逝したり、諸々ばたばたしつつも、久々に吸う日本の春の空気を楽しんでおりました。これからも日本に住むことを楽しみにしています。住みなれし花のみやこの初雪をことしは見むと思ふたのしさ、という想いです。

Google を退職したことは既に前のエントリで書きました。その中で書いた「これからやること」リストの中で、回顧録のこと、ミルクハニーのこと、膝栗毛のことは既に色々動いていますし、ひょっとしたら Twitter などでフォローしてくれたいた方もいらっしゃるかもしれません。ただ、「インターネットをよくする」ということに関しては、リストの中で唯一具体性のないものとして浮いている状態になっていました。

それをきちんと具体性のある形で実現するため、株式会社JADEという会社を立ち上げました。自分、長山一石が代表取締役社長 / Chief Executive Officer、SEO で有名な辻正浩が代表取締役副社長 / Chief Optimisation Officer、広告運用で有名な小西一星が広告担当執行役員 / Chief Advertisement Officer、という形で、3人で始めた会社です。無事無職を卒業して、社長という肩書きになりました。社会的信用という点でいうと、起業したての社長など、大して無職と変わらないかもしれませんが…笑

ja.dev

辻正浩氏を誘うまで

さてこの会社、自分がまず辻さんを誘い、そして次に小西さんが合流する、という流れでできた会社でした。よく「どちらから、どうして、どのように誘ったのですか」、と聞かれるので、ちょうどそれを行なったメールを公開します。自分は昨年末に祖父を亡くしているため、2019年が明けてから、「寒中お見舞い申し上げます」、というメールを送った以降での流れでした。

辻さん、

ありがとうございます。

仕事をする上で最も重要なのは、誰と一緒に働くか、だと思っています。もちろん何をなすかや、どのような条件かも非常に大事なのですが、特に何か新しいことをなそうとするならば、信頼できる人間と共に始めることが肝要だと考えます。

そういう意味で辻さんと一緒に仕事ができたらそれはとても楽しいだろうと思っています。誰が代表か、ということは個人的にはあまり重要ではありませんが笑、個人的には、自由に動けて、かつ社会的に意味のありインパクトがある仕事を、信頼できる人と共になすことができる環境を作ることができれば最高だと思っています。もちろん存続・発展可能なビジネスモデルを作ることも大事なのですが。

というわけで改めて提案しますが、一緒に日本のインターネットを良くする会社を立ち上げませんか?Webコンサルということならば、SEO面もそうですが、プロダクト設計やサービス運用、組織づくりまで、総合的なコンサルティングができる会社ができそうかなと思いますし、ベースとなるミッションが明確であれば、コンサル以外のこともできないかなと思います。

それではご検討のほどよろしくお願いいたします。

長山

ご覧の通りざっくりとした誘い方で、この時点でビジネスプランなどがあったわけではありません。しかし、それまで仕事をしてきた中で、辻氏が信用でき、かつ有能な人間であることは確信できると考えていました。自分は仕事の文脈で人を見るとき、大まかにわけて以下のような基準を持っています。

  • (内的倫理) どのような状態が理想であるかに関する理念を持っているか
  • (課題発見) 倫理に基づいて課題を発見することができるか
  • (問題解決) 発見した課題に対して、適切な解決法を提示し、実行することができるか

辻氏はこれらの基準に照らし合わせても、トップ1%に入る人材であり、また、「インターネットをより良い場所にする」ということ、そして、「日本社会にコミットする」ということに関しても、同じ理念をもって動くことができるだろう、と考えました。

今回のことを話すとしばしば驚かれるのですが、

  • 信頼できる有能な人と、
  • 社会に対するよいインパクトがある仕事を、
  • できるだけ自由な環境で行いたい、

と考えた時に、わたしにはこの動きが最適解であるように思われます。この誘いに対して、辻氏がどう考え、どう反応したかについては、彼のブログ記事をご覧ください。

webweb.hatenablog.com

小西一星氏が合流するまで

さて、辻とわたしが一緒になって、グロースとインテグリティをキーワードに、プロダクトに関するコンサルティングを提供する、となったとき、知識のポートフォリオをリストにすれば、例えば以下のようなものがあると思います。

  • 検索エンジン、特に Google の仕様
  • サイトトピックごとのユーザー動向
  • 内的ポリシー制定と手動対策運用
  • スパムフィルタリングシステムの構築とフィルタ運用、機械学習
  • 探索的データ分析と仮説検証
  • バックエンドプロダクトマネジメント

などなどありますが、どれだけリストを細分化しても、特に、グロースに関する部分で、絶対的に欠落している部分があるのは明白でした。広告です。わたしは広告に関する知識はゼロでしたし、辻も検索だけにフォーカスしてやってきた人間です。しかしサイトをしっかり成長させようとする時、広告が必要になる局面は必ず来ます。その際にしっかりとしたサポートを提供できる会社でなければ、総合的なグロースのコンサルティングは難しい、ということは自明でした。

そこでたまたま、以前から辻と親交がある小西氏と飲む機会がありました。彼は Advertiser Community の Top Contributor ですから、わたしも知ってはいましたが、直接、親密に話すのは初めてでした。しかしじっくり話すにつれて、彼が広告運用者として抱えている課題の構造が、辻が SEO に関して抱えていた課題とほぼ同じであることが明確になってきました。本当にグロースを目指すのであれば、まずは真っ当なプロダクトを作ること、そして、それをしっかりとシステムに理解させること、それが必要である、ということです。

人格的にも、彼が信用できる人間であることはすぐにわかりましたから、わたしが「一緒にやりますか?」という誘いを出すまでにあまり時間はかかりませんでした。

それに対して小西氏が何を考え、どう答えたかは、彼のブログ記事をご覧ください。

sem-cafe.jp

インターネットをよくするぞ

では、現在の日本のインターネットには、具体的にどのような改善すべき点があるででしょうか。

1. Google に関する誤解を解く: 会社としても、検索エンジンとしても

わたしが Google でアウトリーチの仕事などをしていてしばしば感じたことは、「日本には、Google に関する誤解が数多くある」ということでした。それは noindex の仕様などといった検索エンジンについてのことから、「広告を買えば検索ランキングも上がる」「Googleはプライバシーに関するデータを悪用している」といった会社の体質に関わることまで、多岐にわたるものです。

もちろん Google からの情報発信の缺乏ということもあります。一方で、情報が発信されているにもかかわらず、それが誤解されていることがしばしばあることも事実です。それは仕様に関わる単純なものから、会社の体質に関わる複雑なものまで様々ですが、そういった誤解が出てくる度、それを是正するために動くことは必要であると考えます。

Google は神でも悪魔でもありません。それはあくまで経済合理性に基づいて判断を行う世界的大企業のひとつです。ただ、理想主義的側面を多分に持ったシリコンバレーのスタートアップとして始まった、という根幹は今でも変わっていません。検索エンジンのコアを作っているエンジニアたちは、Google検索を理想のランキング函数へとたどり着かせるために日々情熱を持って開発を行っていますし、世界的大企業になったいまでも、上層部は理念を持って組織を導こうとしています。

2. 良いサービスが自然に成長できるようにサポートする

これは上記の問題に由来することでもあるのですが、検索エンジンの使用に関する無知や誤解がもとで、本来ならばより成長すべき素晴らしいサービスの自然な成長が阻害されている、ということはしばしばあります。また、その魅力がユーザーに伝わりにくい形で隠れてしまっている、ということもあります。そういった本来の成長を阻害する要因を取り除くこと、そして、そのサービスの本来の魅力がよりユーザーに伝わるようにすること、それをサポートすることが必要です。

と、言うだけでは簡単ですが、それを行うのは容易ではありません。そのためには、サポートするサービスに関して、

  • (バリュー) その本質的価値がどこにあるのか、
  • (プロダクト) どのようなフェーズにあり、ロードマップがどのようなものか、
  • (実装) そのウェブサイトとしての実装がどうなっているか、
  • (ユーザー動向) ユーザーがサイト上で何を見て、どう反応しているか、

をじっくりと理解することが必要となるからです。もちろん我々にとっても容易ではないことですが、このメンバーならおそらく可能であろうと信じています。

3. 外的脅威からプラットフォームを守る

プロダクトを作ろうと思った時、まずは素晴らしいものを作ること、そしてそれを成長させることにフォーカスすることがまず必要です。そして日本には、それを行った結果、素晴らしいプラットフォームとなったサービスが数多くあります。

けれどもプラットフォーム化したサービスには、新たな悩みが付いて回ります。それは、プラットフォームを脅かす外的脅威です。例えばUGCであれば、検索エンジンを狙ったコメントスパムが沸くことはよくあります。ユーザー間でコミュニケーションが取れるサービスでは、ユーザーの間で揉め事になることもしばしばあります。なにがしかのランキングが発表されるとき、そのランキングを自らに有利な形で操作しようとするアクターも少なくありません。

そういった脅威が発生した際に、どのようにしてプラットフォームを守っていくか、ということは非常に大きな問題です。Twitter や Google では、Trust & Safety という部署があり、そのような問題に対していかにして対策するか、という問題に日々向き合っています。

このような問題、adversarial problem と呼ばれる領域は、実はプロダクト、エンジニアリング、アナリシス、オペレーションにまたがる、分野横断的なものです。しばしばこういった問題の向こうには意図的にその問題行動を行なっている人間がおり、その心理を読み解くことが必要となってきますから、単にエンジニアリング的アプローチを取るだけでは十分でないこともしばしばあります。スパムひとつ取っても、まず何をスパムと定義し、どのようにルールを作り、そして何をラベルとして機械学習モデルを作るのか、という問題は、容易に解決可能なものではありません。そういった分野に関して大きな知見を持っているコンサルティング企業は、おそらくあまり多くないのではないかと思っています。

4. 悪い動きに立ち向かう

よいことをする、のは難しいことです。よさとは何か、という定義の問題があり、それに対する回答は複数でありうるからです。けれども、悪いことをしない、ということはそれよりも少しだけ容易です。人間社会において、どこにいっても悪とされることの形はだいたい似通っているからです。ですから、インターネットにおいて、明確に悪い動きがあるときに、それに対して立ち向かい、情報発信を行なっていくことはとても重要だと考えています。辻はそれを「なまはげ」と呼称しました。わたしたちはヒーローでも妖怪でも自動的存在でもありませんが、できることならば、少しでも悪い動きを食い止めるために微力でも動いていければと思っています。

できることを、ひとつづつ

長くなってしまいましたが、これから、できることをひとつづつ、愛をこめてやっていこうと思います。千里の道も一歩から、長い長い中山道も、日本橋を出るところから始まるのですから。

株式会社JADEを、どうぞよろしくお願い致します。