The Decisive Strike

Pulvis et umbra sumus.

Twitter からデータをダウンロードしておきましょう

実を言うとTwitterはもうだめです。突然こんなこと言ってごめんね。 でも本当です。近いうちにサーバーが不安定になり、あらゆる機能がバグりはじめます。 それが終わりの合図です。

実際どうなるかはわかりませんが、SREチームが大幅縮小され、解雇されずに残っていた、Trust & Safety チームの実質的トップ、 Yoel Roth が離職しました。他にも運用系のチームが解雇や離職によって縮小の一途を辿っているようです。

前のブログポストにも「エンジニアリング企業へ」と書きました。さらに言えば、Elonが目指しているのは迅速な「Dev」、つまり「機能の新規開発」であって、極端な「Ops」、運用の軽視があるようです。なので、「Elonが欲しいと思ったアイデアを迅速にリリースする」ことは引き続き行われますが、いわゆる「Reliability」目線での運用にはほぼコストが割かれないことが予測されます。既に崩壊の兆しが見えています。この方針が変わらない限り、Twitter がサービスとして安定的に運用されることはどんどん難しくなります。

ツイッターのような巨大テック・プラットフォームは、相互依存する非常に多くのパーツで成り立っている。「壊滅的な大規模障害の方が興味をそそりますが、最大のリスクは小さなパーツが劣化し始めることです」と語るのは、テック業界で20年以上のキャリアを持ち、サイト信頼性エンジニアリング(SRE)が専門のベン・クルーガーだ。「プラットフォームは非常に大規模で、非常に複雑なシステムなのです」。

分かっている人にとっては、徐々に起こる障害は、より大きなクラッシュが差し迫っている可能性を示す不吉な兆候だ。そして今、それが起きているのだ。

www.technologyreview.jp

なので、今のうちに今までの Twitter データをダウンロードしておきましょう。ヘルプセンターにも書いてありますが、手順は以下です。(以下引用)

Twitterデータをダウンロードする方法

twitter.comでログインしている場合

  1. タイムラインの左側にあるメインナビゲーションメニューの [もっと見る] をクリックします。
  2. [設定とプライバシー] を選択します。
  3. [プライバシーとセキュリティ] を選択します。
  4. [カスタマイズとデータ] を選択します。
  5. [Twitterデータを見る] をクリックします。
  6. パスワードを確認し、[アーカイブをリクエスト] をタップします。

アーカイブの準備が整うと、メールとアプリ内通知が届きます。ダウンロードしたデータの中には、パソコンのウェブブラウザでデータを表示できる「アーカイブ」というファイルが含まれます。

help.twitter.com

設定画面への直リンクはこちらです: https://twitter.com/settings/account

リクエストした後の画面

自分もやっておきました。

Elon Musk は Twitter で何をしようとしているのか

まだ Twitter の一斉解雇をめぐる混乱は続いているようですが、この解雇を通じて見えてくる Elon Musk の意図を考えてみたいと思います。これは公開されている情報に基づく長山個人の推測に基づいた分析であって、正しさはいっさい保証されていません。

個人的な所感としては以下です。

まず第一に、Musk は、Twitter をメディア企業からエンジニアリング企業へと変質させようとしているんじゃないかと考えています。これは、「どの部署がレイオフ対象になったか」から見えてくることです。TechCrunch の記事によれば、米国でレイオフ対象になった主要なチームは、アクセシビリティ、機械学習倫理 (META: ML Ethics, Transparency & Accountability)、人権、キュレーション、PR (Comms)、SRE (Site Reliability Eng) などです。一方で Home Timelines や Health Eng など Twitter のコア機能の開発側チームや Trust & Safety、あるいは Account Integrity まわりのオペレーションなどは、米国ではチーム単位で丸ごとなくなるといったことは起こっていないようです(インドなどの海外オフィスでは、「オフィスごと解雇」のようなことが起こっているようですが)。つまり、「ブランディングや外部との関係性は捨て置き、メディア企業としてのミッションを忘れ、コア機能の開発やモデレーションのオペレーションに集中する」というメッセージになっているように感じます。

そもそも補助線として重要なのは、「メディア企業としての Twitter」というところですね。Twitter の 2021 Letter to Shareholders では、自社のミッションを次のように定義しています。

Our mission is to serve the public conversation, and with a broad selection of content that can be personalized to each individual’s interests, we believe Twitter is the best place to find out what’s happening.

簡単に訳せば、『我々のミッションは、公的な会話に奉仕することであり、個人の関心に特化されたさまざまなコンテンツを提示することで、Twitter を「今何が起こっているのか」を見つける最高の場所にすること』だというわけです。フォーカスが「読者」の側にあることに注意してください。iOS の App Store では、Twitter が「ニュースアプリ」として位置付けられています。「ソーシャルネットワーキングアプリ」というカテゴリがあるにもかかわらず、です。これは単なる App-Store Optimisation ではなく、「Twitter はニュースを発見し、今何が起こっているのかを知るためのサービスである」という思想が根底にあるものだと見た方が良いと思います。

これはキュレーションチームが最も代表している部分です。最近更新されたチームサイトの中で述べられている通り、このチームはトレンドやモーメント、トピックなど、ニュースとして Twitter がユーザーに提示するべきものを決定していました。これは全てガイドラインに基づいて人力で行われており、正確性や中立性に基づいてできるだけ多くのコンテキストをユーザーに与えることを目指していました。それを丸ごと解雇するということは、この「読者側」にフォーカスしたメディア企業としてのミッションを、丸ごと窓から捨ててしまったに等しいと見ています。他の被害を被ったチームも、プラットフォーム企業としての信頼性に関わるチームや、外部とのコミュニケーションなど、メディア企業としてのミッション上必要となる部分に見えます。Twitter をメディアとして捉えた時、「そこに何が表示されるのかをできるだけコントロールしたい」、そして「広告主たちとできるだけいい関係性を保ちたい」と考えるのは当然だからです。これは、広告に依拠するビジネスモデルである以上不可避でもあります。

では代わりに何にフォーカスするのか。何が Twitter にとっての新しいミッションとなるのか。ここからは想像になりますが、Twitter v Musk 訴訟で公開されている前 CEO の Jack Dorsey との会話がかなりヒントになると考えています。これは Exhibit H からの引用、長山による私訳です。

2022-03-26

  • Jack: そう、新しいプラットフォームが必要や。会社じゃあかんねん。それが僕辞めた理由。
  • Jack: https://twitter.com/elonmusk/status/1507777913042571267?s,=20&t=8z3h0h0JGSnt86Zuxd61Wg
  • Elon: Ok
  • Elon: 理想系は何なん?
  • Jack: オープンソースプロトコルであるべきやと思う。Signal みたいに、プロトコルそのものは公開されていて、財団はそれを所有してはおらず、前進させるために活動する。広告モデルはあかん。そうすると政府や広告主が制御しようとする面が発生してしまう。中央化された存在が背後にあると攻撃される。複雑な仕事ちゃうけど、Twitter に起こったことを避けるためにちゃんとやる必要がある。
  • Elon: めっちゃ面白いやん
  • Jack: 5月に Twitter の取締役やめたら、完全に会社からは離れる。僕はこの仕事を通して僕らの間違いを修正するつもりや。Twitter はプロトコルとして始まった。会社じゃあかんかったんや。それが原罪やった。
  • Elon: なんか助けられることあるなら、手伝いたいわ
  • Jack: 考えが整理されたら元々話したいと思ってたんや。重要性をわかってくれるし。助けられることめっちゃあると思う。活動家が入ってきた時、君に取締役になってもらおうと思ったけど否決されたんや。マジであん時くらいにもう辞めたろって決めた。
  • Elon: ワロタ
  • Jack: 今話せる?
  • Elon: 晩飯食うとこやけど1分くらいならいけるわ
  • Jack: 取締役会はあかん。リスク回避しすぎや。君を取締役として足すことがリスクだと思ってる。マジでアホすぎる。逆なのに。でも僕は3%の株と1票しか持ってなかった。デュアル・クラス・ストックもなかった。キツすぎ。また今度もうちょっと話そや。
  • Elon: 話そ話そ
  • Elon: Twitter をよりいい方向に、より脱中央集権的にしようとしているという点では同じやと思うわ
  • Jack: 多分それが一番いい。疑いもあるけど。
  • Elon: ワロタ

ここで Jack が言っていることはそのまま AT ProtocolBluesky として結実するわけで、この二人が完全に同じ方向を向いているかというと難しいところがあります。しかし、Jack とのこの会話が、 Elon による Twitter 買収の動きにつながっていく大きな一因だったと考えることは不自然ではないと思います。この後も Jack と Elon は複数にわたり会話を重ねており、Elon も他と話す際に「それが Jack の意志だ」ということを強調しています。

ここには、「読者に何が起こっているのかを知らせる」ためのニュースアプリとしてのミッションではなく、「自由な発信と議論が行われる脱集権的なプラットフォームを作る」という、「発信側」に重きをおいたミッションが透けて見えます。

だから、今後の方向性として、「広告モデルからの完全な脱却」と、「より脱集権的なあり方」の模索があることは間違いありません。まずは Blue Check など現在 Elon が試しているようなビジネスモデルの新たな形を模索しながら、Twitter のコア機能の開発に注力するような形になるでしょう。Twitter そのものによる AT Protocol の採用もありうるかもしれません。Jack はそもそも Twitter が会社であることが間違いであるという思想の持ち主ですが、Elon は会社として存続させ、ある程度のところで再度上場することを目論んでいます。もし「発信側」に重きを置いたミッションを持った、エンジニアリング企業としての Twitter が成功するのなら、Elon が思い描いた通りになるでしょう。それがどれくらい可能なのか、Elon がこれをうまく実行できているのか、は別の議論です。

「Musk はスパム問題を根本的に理解していない」という話も書くつもりでしたが、ちょっと長くなったのでまた今度にします。(SRE複数解雇も含め、「Webサービス運営というものを理解していない」という話になるかもしれません。)

ちなみに Twitter を Blockchain ベースにすることは、Elon も最初検討していたようですが、その後放棄した模様です。

  • 04-09, Kimbal Musk との会話: 「決済と Twitter みたいなテキストメッセージがどっちもイケるブロックチェーンベースのソーシャルメディアのアイデアあるねん。メッセージをチェーンに載せるにはちょっとお金払わなあかんから、スパムやボット問題も解決。言論の自由も補償される」
  • 04-20, Jared Birchall との会話: 「自由な言論のためのブロックチェーン、ちゅうアイデアそのものは結構よく語られてきたけど、どう実装するかが問題なんよな。」
  • 04-25, Michael Grimes との会話: 「ブロックチェーンの Twitter は無理や。帯域とレイテンシ的な要件がP2Pだとサポートしきれん。Peerが巨大ならともかくやけど、それだと脱集権的なネットワークの意味ないやん。」

今日 Twitter 日本法人を解雇された皆さんへ #OneTeam

Twitter #OneTeam の皆さん、こんにちは。昨年まで Twitter (Scaled Enforcement Heuristics, Health Engineering) で Data Scientist として働いていた Kazushi と言います。

Elon Musk によって解雇された皆さん、おつかれさまでした。これから転職先を探す方もいらっしゃると思います。しかしその前に、まだ自分以外にこの点について公に言及されている方がいらっしゃらないようなので、簡単にブログに書いておきます。これは不当解雇であり、法廷で争うべきことです。労働者の庇護が日本ほど手厚くないアメリカでも、訴訟が起こっています。戦いましょう。

日本では、労働者の意志に反して、正当な手続きを踏まずして一方的に解雇することはできません。今回の大量解雇は経営陣の一方的な判断によるものですから、「整理解雇」と呼ばれるものです。 労働契約の終了に関するルール|厚生労働省 によれば、「これは使用者側の事情による解雇ですから、次の事項に照らして整理解雇が有効かどうか厳しく判断されます」。

  • 人員削減の必要性: 人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること
  • 解雇回避の努力: 配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと
  • 人選の合理性: 整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること
  • 解雇手続の妥当性: 労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと

今回の大量解雇では、納得のいく説明もなく、人選も合理的でなく、解雇回避の努力もされていません。人員削減の必要性もどれだけ認められるか怪しいところです。外資とはいえ Twitter Japan は日本法が適用される日本の株式会社なのですから、そこで正社員として雇用されているみなさんには、法的にこれを争う権利があります。会社が提示する退職合意書には絶対に署名せず、ぜひ弁護士に相談してください。署名する場合も、退職合意書に書かれている割り増し退職金の額は争うべきです。勝訴すれば、そもそも解雇を無効にする「雇用契約上の地位の確認」や、得ていたはずの給与を請求することができます

わたしは弁護士資格を持っていないので法律上のアドバイスを直接行うことはできませんが、知り合いの弁護士を紹介することはできます。必要ならDMしてください。

twitter.com

Twitter 凍結屋みたいなスパマーを取り締まるのも楽じゃない、という話

長山です。最近 Twitter 凍結屋の話が盛り上がっていますね。自分は Twitter でデータ・サイエンティストとしてスパム対策チーム (Twitter Health Engineering) に在籍していたことがあるので、少しこの件に関連して、スパム対策の苦労について書いておきたいと思います。

ここでしている話は基本的に「プラットフォームのスパム対策における一般論」であって、Twitter 的に Confidential な話はしていません。自分は Google Search、Google Play のスパム対策チームにも在籍したことがあるので、大規模プラットフォームにおけるスパム対策という観点で書いておきたいと思います。

今北産業

  • スパム対策は結構難しく、報われない仕事。
  • 陰謀論的に語られることが多いが、単に難しい仕事に能力が追いついていないだけ。
  • 一般ユーザーは、被害に遭ったら積極的に発信してフィードバックしよう。

スパム対策一般について

まず抑えていただきたいところは以下です。

  • スパム対策は常に敵対的なアクターとの戦いであって、スパマーはプラットフォーム側のスパム検知から逃れる術を常に探っている。
  • スパム対策はかなり専門的な分野であって、恒常的な分析とシグナルマイニング、ルールベースと機械学習を組み合わせながら、スケーラブルなオペレーションを行う必要がある。
  • いかに効率的なスパム対策チームでも、100%のスパムをキャッチすることはできない。基本的にスパム対策でとりえるアクションはアカウントの停止などの非常に厳しいものが多いため、偽陽性を出さないよう精度 (Precision) を上げることが非常に重要になる。必然的にカバレッジ、適合率 (Recall) はあげづらく、偽陰性は増える。

スパム対策は報われない仕事

スパム対策は基本的に報われない仕事です。うまく行っているときは問題の大きさが見えなくなるため誰からも褒められません。99%をキャッチしたとしても、1%が漏れると「運営は何をやっているんだ」と叩かれてしまいます。それでも日々ポリシーを制定し、ケースごとの解釈を行い、シグナルマイニングを行い、オペレーションを整備し、モデルを継続的に訓練する、ということをしなければならない。これらはリーガルやデータ、エンジニアリング、オペレーションなど、複数の専門性にまたがっているので、一つの問題に複数の部署からの担当者が当たることも多く、大きな会社では部署間のコラボレーションも必要になります。

なぜもっと問題を迅速に発見・対処できないのか

プラットフォームの大きさに対して、問題のあるアカウント、問題のあるアクティビティが非常に少ないからです。たとえば Twitter はグローバルで億単位のアクティブユーザーを抱えている一方、スパム対策に割けるリソースは限定的です。もちろん、日本は有数の重要マーケットではあるのですが、同時に非常に特殊なマーケットでもあり、日本にローカルのスパム対策専門家チームを育てていく必要があります。それは簡単なことではありません。

また、どのスパム問題が大きいのか、を理解するためには、ある問題の発生頻度とその重篤さを同時に考える必要があります。それを同時にただしく認識することは非常に難しいです。スパム対策において最も難しいのは、ある事象が問題だと理解することです。ラムズフェルドは Known knowns, known unknowns, unknown knowns, unknown unknowns の4章限で知識を語りましたが、unknown unknown を unknown known に変えることそのものが、とても難易度の高いことです。しばしば人は「運営がこんな問題も認識できないはずがない、なにかの陰謀だ(政権と汚職で繋がっている、ユダヤ人が裏にいる、赤子の脳みそを食う悪魔崇拝者に違いない、などなど)」と思いがちですが、そうではなく単に無能なだけ、正確にいうと「問題の複雑さに対してリソースが追いついていないだけ」です。ハンロンの剃刀を思い出しましょう。

なぜ凍結されたアカウントを復旧させるのは苦行なのか

ここを容易にしてしまうと、スパム対策の意味がないからです。もちろん偽陽性を出してしまった時、それを正しく復旧させるのは非常に重要なのですが、ある復旧申請がスパマーによるものなのか、それとも哀れな一般ユーザーによるものなのかは判別が容易ではありません。アカウント停止前はもちろん「疑わしきは罰せず」の精神で、「立証されない限りスパムではない」としますが、一度停止されたアカウントを復旧させる際はこれが逆になり、「立証されない限り一般ユーザーではない」になってしまいます。ここの塩梅は非常に難しいです。

一般のユーザーには何ができるのか

誤凍結されてしまったら、凍結解除申請のプロセスに入った上で、経緯を積極的に発信してください。Make some noise! 多くの場合、チームはこういった自分達の認識していない問題がどれくらい存在し、どれくらいの規模と重篤さがあるのかを知りたがっています。

これは「停止されるべきであるのに停止されていない」ようなスパムやアカウントに関しても同様です。スパムを発見したら、レポートした上で、積極的に発信して、対策チームに届けましょう。

おわりに

もちろん、スパム対策チームは100%の精度で100%のスパムをキャッチし、誤凍結などが発生したら速やかに解除するのが理想的な世界です。しかし多くの場合チームは(プライバシーに対するケアの問題もあり)半ば目隠しをしながら対策を行っていることがほとんどです。報告し、発信することで、プラットフォームにフィードバックしていきましょう。

ちなみにですが、現在自分が創業者兼最高戦略責任者をやっている JADE では、プラットフォーム向けにスパム・アビューズ対策のコンサルティングも行っています。実際にスパムに悩まされていたクライアントが効率的に対策を行えるようにもなっています。悩んでいるプラットフォームの方がいましたら、ぜひ一度ご相談ください。

ウォーハンマーはいいぞ

このブログ記事は、Splathon Advent Calendar 2021 の1日目です。明日はしんさくさんです。

コロナのあいだにハマったものはありますか、と聞かれると、常に「ウォーハンマー 」と答えています。自分がやっているのは、Warhammer 40k というやつで、41千年紀の宇宙におけるクソみたいな人間たちと混沌神とエイリアンたちの死闘を描くミニチュアウォーゲームです。情報量が無駄に多かったのでひとつひとつ説明していきますが、千年紀というのは1000年ごとに分割した時代区分で、現在2021年は第3千年紀に属します。つまり41千年紀というのは今から38000年後の話ということになります(ADであれば)。そこではサイキック能力を使えるようになった進化したスーパーヒューマンたち(特殊な手術を施して超人的な力を得て数千年生きられるようになっているものも数多くいる)や、混沌の神に使える忠実なデーモンたちとそこに魂を売った人間たち、そしてはるか昔に栄えた宇宙エルフや何億年もの眠りから覚めた宇宙スケルトン、戦闘キノコ生命体である宇宙オーク、そして20世紀初頭くらいの技術で頑張るパンピーなどがひたすら戦争を繰り広げています。自分も始めたばかりなのであんまり設定には詳しくないですが、イギリスの猛烈な厨二病の妄想を二乗した程度のぶっ飛び設定だと捉えれば大体間違い無いです。地獄です。

https://www.frontlinegaming.org/wp-content/uploads/2020/05/necrons3.png 宇宙スケルトン

こういったさまざまなぶっ飛び設定を持つ軍団を組織し、プラモを買ってきて組み立て、スプレーして色を塗り編成を組み、おもちゃの軍団を作り上げてひとしきりにやにやしながら「俺って色塗るのうまいな」と自尊心を高めた上でバトルにもっていき、他の人の作品がさらにうまいことに驚愕して目ん玉をむき出し、「か、かっこいいですねえ…!いろぬるのうまい!!!!」と知能0のコメントをした上で、鈍器のようなルールブックを片手に、そこまで複雑では無いはずのにファクションごとやユニットごとのバリエーションや追加ルールがめちゃくちゃ多くて把握が不可能と言ってもいいルールに頭を悩ませながら、「俺の組み立てたカッチョイイ〈虚の龍〉(ルビ: ヴォイド・ドラゴン) のク=タン・シャード (ルビ: 古代神の欠片) が《反物質のメテオ》(ルビ: アンチマター・メテオ) で攻撃するぜ!バリバリバリ!」「なにを!俺のゴキゲンなオルクどもは《猛獣掴み》 (ルビ: ビーストスナッガ) の一族だから気合いでダメージなんて吹っ飛ばすぜ!オラッ硬い皮膚バリヤー!」みたいなことをサイコロ振りながら言い合うゲームです。ゲーム参入障壁の高さ(価格が高い・組み立てて塗るのに時間がかかる・保存にスペースが必要)と継続の容易さ(一度塗ってしまったものは物理的に残り続け、またルール的にもサポートされ続けることが多いため、一度離れても戻ってくることが簡単にできる)が故にプレイヤーの平均年齢が他のホビー(たとえばTCG)などに比べて高いため、だいたいオッサン2人で小学生のごっこ遊びをしているような絵面になります。サイコーに楽しいです。

〈虚の龍〉(ルビ: ヴォイド・ドラゴン) vs帝国技術局 (ルビ: アデプトゥス・メカニクス)
〈虚の龍〉(ルビ: ヴォイド・ドラゴン) vs帝国技術局 (ルビ: アデプトゥス・メカニクス)

何が楽しいか、というと要はこういうことです。

  • 色を塗るのが楽しい。自分は中学生の時、時間ギリギリまで頭を悩ませて作った作品の評価が10段階中2で、なんか15分くらいで終わらせてあとは楽しそうにくっちゃべってたやろうどもの作品の評価が8だった時から芸術的なものを憎んできたのですが(先生覚えてろよ)、フィギュアぬるのなんか楽しいです。専用のアクリル絵の具が優秀で、水溶性で変なにおいとかもきつくなく、さっと塗ったらそれなりにカッチョイイし、ガイドが充実しているので動画を見ながらその通りに塗るだけでかなり鑑賞に耐えるものができます。自分が上達するのが目に見えてわかるので、楽しいです。
  • 編成を組むのが楽しい。これはTCGのデッキ組みとかと一緒なんですが、とにかく戦略を考えながら軍団の編成を考えるのが楽しいです。また買ってきて・組み立てて・色を塗らないとそれが実現しないので、自分の理想とするデッキをつくる過程が「兵站」としてあるので、よりコミットメントが増します。実際の戦争も軍艦作ったりするの時間かかるでしょ。次の戦役までに急ピッチでこの戦車を完成させなければ…!みたいなリアル戦争感をあじわうことができます。
  • バトルが楽しい。大きいものだと 2m x 1m くらいのでっかいボードとテレインを使って、多いと 100 体以上の兵隊が参加する巨大な戦場が机の上に出現します。長くて4時間くらいかかるんですが、もう兵隊動かしてるだけで楽しいです。究極ごっこあそびなので。もちろんルールもしっかりしていて、自分の考えた編成と戦略がうまくハマると脳汁がドバドバ出ます。逆にコテンパンに負ける時はめっちゃコテンパンに負ける時もあり、プレイ2回目くらいの初心者の時に結構ガチなデッキにほぼ1ターンキルをかまされたのはいい思い出です。ハハハ…一生語り継ぎますからねTさん。

我が王朝のエリート兵たち
我が王朝のエリート兵たち

てな感じで最近は最低月1は遊べており非常に幸せです。最近はあそぶためだけにホビーショップに行ったりもしています。初対面の人との対戦は緊張しますが発見も多いです。自分の主なデッキは上に貼った画像の宇宙スケルトン軍団で、ネクロンというんですが、数億年前に活躍したが諸々経緯があって全身義体化した上で長い眠りについていたのだが最近起きてきて人間どもの存在に気づき「なんじゃここはうちの領土やぞ」と活動を始めたという超古代宇宙エジプト人たちです。上にもちょっと出てきた〈虚の龍〉というのはネクロンが以前戦って封印した古代神の欠片で、奴隷として使役されています。もうね、モデルが厨二病すぎてやばい。塗るのめっちゃ楽しかった。機械の軍団作り上げるの楽しすぎる。

行け!戦士たちよ!
行け!戦士たちよ!

より参入障壁が低い Warhammer 40k: Kill team という戦術級(1部隊の編成を組み、多くても5〜10体程度の兵をつかう)のゲームもあるので、いまならそちらから入るのがいいかも。こちらは長山は宇宙キノコであるオルクというファクションを使っています。こっちも大変ゴキゲンでプレイしていて楽しいです。興味がある人はぜひ長山に声をかけてください。

以上、最近ウォーハンマーにどハマりした初心者のレポでした。来年も Splathon をよろしくお願いします。