あれから18年経つ。わたしは36歳になった。
今年から、今まで京都に帰っていたのをやめ、東京の墓に参ることにした。
少し思っていた。そして時代は変わるんじゃないかって。あの日に囚われることから解放されるんじゃないかって。
昔は、いつか父の死を乗り越えることはできるだろうって思ってた。
新しい時代を迎えて、父の死は過去のものになって、そして前を向いて生きていくことができるって思ってた。
でも残念ながらそうではなかった。
父の死は今でも昨日のことのようだ。
今でも冗談であって欲しいって思ってる。
今でもひょっこり帰ってきて欲しいって思ってる。
なんだカズ、お前本当に俺が死んだと思ってたのか?俺は長山だぞ、そんな簡単に死ぬわけなかろう、って言って欲しいって思ってる。
そんなことがあるはずもないのに。
わたしには、父の死を乗り換えることはできなかった。
一生このトラウマを抱えて生きていくしかないのだ。
ずっとビクビクしてる、また大切な人が死んでしまうんじゃないかって。
すぐパニックになる。大切な人に連絡がつかないだけで。
心配で不安で、あの時のことが脳裏に蘇る。
近鉄電車に揺られながら、まだわからない、死んだとは限らない、と考えていたあの時のことを。
また誰かを無くすかもしれない、俺は。そう思って心拍数が上がる。
これはもう治らないのだろう。
それでもなお、生きねばならない。